花宮(はなみや)、今日も可愛いなぁ……」



キミが彼女を見ながら、そんなことを呟く度に私が堪えた涙は、果たしてどのくらいなんだろう。

キミがそんなことを呟く度に、私が泣きそうになるのを、キミは知らないでしょ。


それを隠すように、私はただ一言「……そう」と呟く。


聞きたくないな、そんなこと。

本当のことを言えば、今すぐにでも逃げ出したい。

……それができないのは、



「どうしたら、花宮を振り向かせられるのかなあ……。奈々佳(ななか)、なにかない?」



……私が彼の、恋愛相談役だから。

好きな人の恋愛相談役。それって、結構残酷なんだよ。



「……あいさつはできるようになったんでしょ?すごい進歩じゃん!」



口ではそう言いながらも、心の中では皮肉めいたことを考えてしまう。


本当に、すごい進歩だよね。



一か月前、私に突然

『好きな人ができたんだけど、どうすればいいんだろ、俺……』

なんて、弱々しく呟いていたのと比べたら、すごい進歩だよ。


……私はずっと前から好きだったのに、要のこと。なんで花宮さんなんだろう。

……って、そんなのは、私が一番よく知っている。


……泣きたいくらいに。



「でも、好きな人に振り向いてもらえなきゃ意味ねぇよ……」



そう言って、キミは窓の外にいる彼女を眺める。