薄暗い雲が空を覆う。


雨粒はアスファルトや傘に当たり軽やかな音を鳴らして、リズムを刻むわけでもなく恣意的なそれは彼みたく気分屋さんなのだ。


1つの傘に男女が二人。どきどききゅんきゅん。恋やらなんやら芽生えそうなそのシチュエーション。


「傘の柄ってパンツの柄らしいよ」


と、ぽろり彼が言葉を溢す。


ほう。うん。とにかく私の傘を凝視しないでくれるかな。


「透明かぁ…。お前、すげぇな」


何その感想。地味に距離とらないでくれるかな濡れるんだけど。これ私の傘だよね。


傘持ってるからって持ち主を傘から追い出すとは何事。


ムカついたので鳩尾に肘を入れてやった。ざまぁみろ。