5.トラウマ

「最近、どう?いい人できた?」

目の前で私の顔をのぞき込むのは、高校時代の友達、木下真結。

久しぶりにあった彼女は少し化粧が濃くなっていた。

服装も以前と違って女性らしいフレアスカートなんか履いて、イメチェンでもはかってるのかしら。

彼女とは高校の時はそれほど親しいわけでもなかったけれど、同窓会で再会してから一年に一回会ってお互いの近況報告をする程度の仲。

二人とも独身ということもあって、なんとなくずるずるその関係は続いていた。

でも、今日は後悔している。来るんじゃなかったって・・・・・・。

あれから結局醍からの連絡はなく1週間が過ぎた夜、ふいになった電話が彼から?なんて思って確認もせず慌てて出てしまったら真結からの電話だったってわけだ。

「ちょっと話したいことがあるの」なんて言われて、さすがに「私は話すことはありません」とは返せない。

気がついたら、空いてる日を尋ねられ私がたまたま休みだった日曜の昼に会うことが決まってしまった。

「ねぇ、聞いてる?和桜はあれからどうなの?いい人できた?」

毎回この話題にうんざりだった。

彼女は高校時代の友達からの情報で、私が親友の珠紀にフィアンセをとられたことを知っている。

心配しているようで、実はしていないんじゃないかって思う言動が端々から見受けられた。

「いい人?そんなのいないよ。興味もない」

ふと醍の横顔が浮かんですぐに消し去る。

「そうなんだぁ。早くいい人見つけないとあっという間に40代だよー」

「はいはい」

私はかったるい返事をして、クリームソーダーを飲んだ。

「そういう真結はどうなの?」

自分に話題を振ってくるって事は自分に振って欲しいってこと。

真結は昔からそうだったから、質問してあげた。

「え?私?実はさぁ~」

やっぱり。

真結に気付かれないようにため息を一つついた。