「…このまま…」

「……課長…」

顔を上げた私に課長は、優しく微笑んでくれた。
そして私を抱きかかえると、自分の部屋へ連れて行った。

私をベッドに寝かせると

「今日はここで…。安心していいから」

そう言うと、課長もベッドに入り私を力強く抱きしめてくれた。
私は課長の胸に顔を埋めた。
それがとても居心地が良かった、課長の心臓の音が聞こえてきた。大きく息を吸うと、頭の上から声が聞こえた。

「泣きたければ、泣きたいだけ泣いたらいい。我慢するな。櫻井、安心しろ。一人じゃない」

私の気持ちをいつから分かっていたのか、それとも今日知ったのか。
課長が背中をさすりながら話しかけてきた。

「櫻井…大丈夫か…俺がいるから」

「…っ、か、課長…っ、う、うっあー」

俺がいるから、と言われて何かの線が切れたようだった。
あの時、流す涙もなくなったと思っていたのに、声を出して私は課長にしがみついて泣いた。