大家さんを探して、一応の話は聞いた。金田さんが言ってた事そのままだった。
マンションと言っても築30年の古いハイツみたいな所だったから、火の手を止める事が出来なかったみたい。しかも火元は大家さん自身。

どないなっとんねん!

はぁ。
とりあえず、連絡先だけ聞いて私は今日の寝床を探す為に、会社近くの24時間開いているファミレスにやってきた。

スマホを取り出して、ビジネスホテルを検索してみた。

あー、結構あるけど、会社から近い所から連絡してみるかな…
カバンから、手帳を取り出して何件か電話番号を控えた。

片っ端から電話をかけていった。

「…そうですか…はい、すみません」

はぁ。これで何件目?
満室って、何よ。
どれだけの人間がこの東京に来てるのよ。

最悪…
会社近くのビジネスホテルは全滅だった。
慣れない場所のホテルに泊まるのには、抵抗があった。
ただでさえ、東京に来て1年かけて、電車に乗れるようになったって言うのに、ややこしい路線の所は避けたかった。

ここしかないか…
会社の最寄り駅から二回も乗換えが必要だったけど、そんなに立地も悪くなさそうだし、もう一回電話をかけた。

「…え?あ、空いてますか?はい、今から行きますので、押さえてもらえますか、はい、櫻井朋香です。はい、お願いします」

よかった。
ダメ元でかけた最後のビジネスホテルが空いてた。
急いでファミレスを出て電車に乗った。

なんでかな、本当についてない。
給料日前だし、あまり余裕もない。
はぁ、服も下着もないよ…
全部買わなきゃ…

ホテルがある駅に着いてから、その事に気がついた。

しまった…
渋谷にいる時に買えばよかった…。時すでに遅し、ここにはコンビニしかなかった。

「はぁ。何やってんねんやろ、私」

ボヤキまで関西弁になってしまった。

とりあえず、下着と化粧品をコンビニで調達していった。

ホテルにやっとの思いで到着した私は、受付をして鍵を受け取り部屋に入った。
ベッドと机がある簡素な部屋。

ベッドにダイブした。
疲れた…
このまま…

いつの間にか寝てしまっていた。