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 ワールドカップやハロウィンの時季になると若者たちが大勢詰めかけることで有名な、大きな交差点がある都心の駅。

 高速道路と幹線道路が並走し、巨大なビルが立ち並び、民族大移動みたいな人の群れに押し流されそうになりながら、迷いに迷ってようやくたどり着いたデザイナーズビルの七階に、『STYLIS株式会社』は入っていた。

 迷わずに辿り着ければ徒歩十分もかからないらしいけれど、慣れるまではもっと早く家を出てこなければとあらためて気を引き締める。

 三十分以上余裕をもって家を出たはずなのに、結局会社に着いたのは始業時刻ぎりぎりの時間だった。

「お、おはようございます! 今日からよろしくお願いいたします!」