【杏彩side】


春瀬がわたしに再び構い初めてから一ヶ月が過ぎた。



────……じゃあ、本気ならいいわけ?



そう言った春瀬の表情が見たこともないくらい真剣で、苦しくなるほど切なげな瞳をしていた。

そのせいで、あの日の言葉や表情が頭にこびりついて離れない。

あれからというもの、春瀬は気の向いた時にだけわたしの元へ構いにきて、気の向かない日はいつものように女の子と放課後は消えていった。


また都合のいい扱いをされているいうことくらいわかっている。


それでも、また春瀬と過ごす時間があることを嬉しく思っているわたしがいるのも事実。


はあ……こんなんだからいつまでたっても一番になれないんだよ。



「今日はせっかくの球技大会っていうのになーに辛気臭い顔してんの」



運動ができる千里は今日の球技大会をすごく楽しみにしていた。

一方のわたしはとくに運動ができる訳でもないので全然楽しみにもならない。


まあ、授業よりはマシだけどね。