【杏彩side】


『俺たち、もう終わりにしよう』


そう言われて、一時間ほどが経っただろうか。
人ひとりいない放課後の教室は妙に広く感じる。


いつもは狭くて移動するのが面倒なくらいなのに。


それとも、気持ちがブルーだからそう感じてしまうのか、きっと後者だと思う。


あーあ……終わってしまった。


イケない関係だったことくらい分かっていた。
わたしだって100%好きな気持ちがあったわけじゃない。


虚しいような悲しいような、どちらとも言える気持ちを抱えながらわたしは静かに涙を流した。


幸せな結末なんて迎えられないことを彼と出会ったときから分かっていたはずなのになあ。

でも、不思議と喪失感はなかった。

それは彼とわたしが傷を負っていた同士で、ただそれを慰め合う関係だったからなのだろうか。