ケータイ小説 野いちご

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コーヒーに砂糖とミルクを注ぐ時

閉店当日

時計の針が真夜中を指す。もう閉店当日だ。

お風呂に入り、ベッドに横になっても眠れない。それは明日ーーー正しくは今日が閉店の日だからというわけではない。

紫乃さんの言葉が記憶の奥底にしまおうとしても、しまえない。なぜかこだまのように胸に響いて消えない。

きっとあの後泣いてしまったのは、過去のことを少し思い出してしまったからだ。

私の両親は共働きで忙しく、ほとんど家に帰ってこなかった。いつも家は静寂に包まれていた。兄弟などはいない。

帰ってきても、あれをしろこれをしろとうるさいだけだった。私は両親にとって人形でしかなかった。

小学六年生のある夏の夜、寝苦しくて起きていた時、両親の会話を聞いてしまった。

「ほんとは男の子が欲しかったんだがな……」

「そうね。あの子はあまり出来が良くないわ」

「お前がもう一人産めたらな〜」

「今は仕事が忙しいから無理よ」

私は愛されていない。生きていることを、望まれていない。その現実を突きつけられ、一晩中泣いたことを今でもはっきりと覚えている。

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