ケータイ小説 野いちご

コーヒーに砂糖とミルクを注ぐ時

閉店前日

私、白川雪(しらかわゆき)は人を愛せない。愛したいけど、愛せない。信じたいけど、信じられない。それでも生きている。

この街でカフェ『サンタクロース』を開いて、もう八年になる。大変なこともあったが、色んな人に助けてもらった。……その人たちのことすら、真っ直ぐに信じられないけど。

このカフェは明日で閉店を迎える。突然の閉店にお客さんからは驚きの声しか聞かない。

閉店の理由は、私が結婚するからだ。

親友の咲が二十三歳の時、授かり婚をした。それ以来、両親はしつこく私に結婚と孫の顔を見せろと言った。

私は恋人がいないこと、カフェで働くことが楽しいことを理由に逃げ続けた。私は人を愛せない。そんな私が結婚なんて馬鹿げている。

しかし三ヶ月前、二十九歳になった日、私はお見合いをさせられた。家に帰ると両親とお見合い相手が待っていて、逃げることなどできなかった。

相手は私より年上で三十三歳。そこそこ有名な病院に勤めていて、結婚をするなら専業主婦になってほしいと言った。

私の両親と相手の両親は、私と相手との結婚に賛成していて、彼も結婚する気でいた。私に拒否権は与えられなかった。返事は一つしか許されなかった。

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