そして次の日。私はちづと一緒に朝を迎えた。恐怖を共有するように昨日は手を繋いで寝た。おかげでいつもよりは長く寝ることができた気がする。



「ねえ、たまには街にでも行ってみようか」


以前はよくちづとカフェめぐりをしたり、美味しいものを食べに出掛けたりしていたけれど、予告動画が始まってからは一度も遊びらしい遊びをしていなかった。


「……でも」

心の優しいちづはそれさえも不謹慎に感じてしまうのだろう。
   


「どうせ1日中家にいても落ち着かないしさ。たまには息抜きしようよ」  


ずっと緊張状態が続いていたし、外に出掛ければ少しは気が紛れると思った。



「そう、だね。久しぶりに遊ぼうか」


やっとちづらしい柔らかい笑顔を見せてくれて私はホッとする。どうせなら前園さんも誘おうと提案して、私たちは数日ぶりに遊びに出掛けることにした。



前園さんとは近くのコンビニで待ち合わせをした。前園さんはスタイルがいいから遠くからでも目立っていた。



「前園さんはやっぱりオシャレだね」

「そう?小島さんの洋服のほうが可愛いよ」

「えー本当?このスカートはあずのを借りてるんだけどね」


ふたりの他愛ない会話を聞くだけで心が和む。


すれ違う学生たちはみんな夏休みを満喫していて、肌もこんがりと小麦色になっていた。

予告動画さえなければ私たちも海に行ったり、きっと夏らしいことをいくつもしていたはずだったのに……。



「木崎さん?」

ハッと気づくと、前園さんが心配そうに私の顔を見ていた。



「ご、ごめん。ぼんやりとしてた!どこに行く?」


せっかく気分転換をしにきているのに、気持ちが縛られていたらなんの意味もない。