ケータイ小説 野いちご

この作品のキーワード

世界で一番似ている赤色

影は見るな、空を見上げろ。
3






それからも何度か優にぃと会った。


電車で少し遠い所にいったり、公園で話したり、川沿いを歩いたり。



それまでは色々遊べるような街を選んでいたけれど、落ち着いた場所に行くのもそれはそれで楽しかった。


優にぃとゆっくり時間を過ごすことができた。



夏が近づいてきたある昼休み。



「ねぇ、綾ちゃんのこと、サーヤちゃんって呼んでいい?」



クラスでよく話す友達2人が、わたしに笑いかけてきた。


突然、新たな呼び方をされ、びっくりしてしまう。



「隣のクラスにも彩ちゃんって子いるじゃん。間違えないよう、こっちの綾ちゃんは苗字と合体させてサーヤちゃん」



わたしのフルネームは坂口綾。それで『さあや』→『サーヤ』とのこと。


確かに、体育の時間とかで『彩ちゃん』という声が聞こえると、わたしのことかと一瞬ビビることがある。



こそばゆさの奥から、嬉しさが漏れてきた。


あだ名をつけられたのは初めてだ。



この友達2人は、教室移動や休み時間によく絡んでくれる。


ありがたい反面、1人でいることが多いわたしに同情しているだけじゃないか、と思うこともあった。


または、クラスの上位の子たちに何も言えない同士でグループになっただけ、みたいな。



わたしも心を開いているわけではないから、表面的な話しかしたことがない。


冷めた目で見ていたことに、申し訳なさを感じた。



「実はうちら、綾ちゃんが最近明るくなったね、って話してたんだ」


「え……」



わたしが一瞬、固まると、


「あ、別に暗かったって言いたいわけじゃなくて……! ごめん!」


と慌てて謝られた。



2人ともわたしに対して過剰に気を遣ってくる。


それは、わたしがクラスメイトに心を開いていないから、だと思う。



「わたしも2人のことあだ名で呼びたい。何て呼んだらいい?」



そう伝えると、2人はニッコリ笑い、わたしたちの間で使うあだ名を考え始めた。



わたし、明るくなったのかな。


もしそうだとしたら、きっと優にぃのおかげだ。


< 25/ 196 >