騎士の皆は怪我はしていないだろうか。

王は体調を崩していないだろうか。

治療の手伝いの合間や、家事の最中、就寝前と、事あるごとに気にかけながら過ごすこと二週間と少し。


「おまたせ〜!」

「お疲れさま、エマ」

「メアリもね。さあ、飲むぞー!」


気晴らしにでも出ておいでとジョシュアに気遣われたメアリは、日が暮れてから親友のエマが働く酒場に訪れていた。

空は朝からぐずつき、夕方頃から雨足を強めている。

地面や家屋を叩く雨音は、酒場でジョッキを重ね合い盛り上がる客の賑わいでかき消され、雨の気配すら忘れるほどだ。


「ほいよ、こいつはサービスだ」


窓際の席に腰掛けるメアリとエマの前に、トンと音を立ててレモンの果実酒が注がれたグラスがふたつ置かれた。


「ありがとう、おじさま!」


笑顔でお礼を述べるメアリに、酒場の店主であるエマの父は、普段は強面の顔を満面の笑みに変えてカウンターの中に戻っていく。