食事もお風呂も宿題も済ませた深夜、私はパソコンを開いた。

開いて、ブックマークしていた彼の小説を見る。


あの向日葵みたいな彼の小説。現実では友達も多いし、女の子にも人気の彼が、理不尽な権力を振りかざす大人たちを殺すホラー小説を書いているのだから、気になってしまう。

『今日は、ナイフを手に持ってぶっ殺そうとベットの上で正座していた』

この一文を、あの蝉の声がする駄菓子屋で売っていたと思うと感慨深い。

『たった一人の親だと関係ない。俺はまじで、やばい。これはやるしかねえと思って本気だった』

彼らしい、文章を飾らない、本人の特徴が出ている文章だと思った。

『なのに、殺人鬼の俺は人を好きになってしまったので、今日はストップすることにした』

彼の書く殺人鬼が、ナイフを置いた。この短い文章で一ページ。

あの駄菓子屋で書いていたのはここまでだったようだ。
そしてもう一ページ。


『文章で表すのは難しいけど、同じクラスの女の子だ。下を向いている。会話に参加しない。クラス行事に興味なさそう。なんだか冷たそうな子だった。そんな子が、繊細で柔らかい色使いで日常の美しさって絵を描いていた。この子の世界は、美しいんだなってなんだかちょっと安心した。』

私のことだろう。私のことを書いてくれてるんだ。