豆電球のオレンジ色が、
倫太郎の部屋を色濃く照らしていた。


彼は布団に潜ったまま、
自分の体がぜんぜん動かない事に気が付いて

非常に驚いた。


全身が痺れて声も出せなかった。
息もできないなと思ったけれど、

別にそれは苦しくは感じなかった。


部屋がいつもと違う雰囲気だと理解する。

寝る前は閉めてあったはずの窓が開かれている。

外から子供たちの騒ぐ声が聞こえる。
今は夜中なのに、
不自然な程、叫んだり喚いたりしている。


風の音、水の音、人の声、さらには人では無い者たちの声が絶え間なく聞こえていた。

倫太郎は思った。
今日の金縛りは格別に長くて、鮮明だな、と。


それから人の形をした黒い影が、
目の前に座っているのも見えた。


それは真っ黒い髪の毛の間から、眼球をむき出している。オバケだな、とすぐに分かる。


「……アキバレノ……ナイ、ゾウ、ハ。キエル、ヨ。ミエナイ。ヨ。オマエニハ、アノイエ、ニ、ハ、モドレナイ、ヨ」


このような言葉を力なくモゾモゾと言っている。
倫太郎にその意味は理解できなかった。


けれどもその声は、彼の心の内側から発せられている残像のような声であるなと感じ取った。


しばらくは体を動かそうと試みて、力を入れたり頭を持ち上げたりしようとしていた。



でもどれだけ工夫を凝らしても金縛りが解けるということは無かった。