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「ケンカ、ちゃんとしようとしたじゃん」

「え…?」

「ケンカっつーか…ちゃんと言いたいこと、言えたんじゃないの?」



言いたかったこと…言えたのかな。



「でも…逃げちゃったよ」

「大丈夫大丈夫。あのくらいなら」

「………」




『大丈夫』



こんなにも、安心させてもらえる言葉のはずなのに。

私は、その大売り出しをしてしまったがために。




「私…逃げてばっかりだよ…」







ーー逃げてばっかりのきっかけとなったのは。



中学三年生の夏休み。

瞳真との一件があった、その1ヶ月半後のことだ。



今シーズンの集大成ともいえる、全国大会。

その二回戦の後半にて、相手のマークを振り切りうと足を切り返した時に、相手が突然ハードチャージしてきて、猛烈な勢いで一緒に倒れ込んでしまう。

その時、ブチッという音がしたのを覚えている。

こぼれたボールを追いかけようと立ち上がろうとしたが、右膝に激痛と抜けた感覚があって、立てずに、その場に踞ってしまう。



痛い。

痛いし、何で立てないの?