わたしが働いている職場は、県内とその近郊に30店舗ほどを構えるアパレル会社の本社で。総務部に配属されて、各店舗の運営上必要な要望を受けたり、手配と調整を行ったりだのが仕事のメインだ。
小さな商店から始まり、今の社長で3代目。大手の有名アパレルに押されて経営は楽じゃないらしい噂も、今の世の中どこも似たようなもの。

うちの実家にしたって。・・・昔ほど威勢のいいことは出来ないし、どうなるんだろうって考えたりもする。わたしは跡継ぎじゃないとは言っても他人事には出来なくて、凪にも無関係じゃないから。

わりと無表情で顔色は読めないし、そういうことも凪は一切話さない。単なる世話係に徹して、わたしを蚊帳の外に置きたがってるのは知ってるけど。

春日瀬里(かすが せり)は。大島凪(おおしま なぎ)にとって、何?

思いが蒸し返して、ひどくモヤモヤする自分がいる。きっと来月に凪の誕生日が来るから。
一年前のあの日。自分には答える権利がない、って凪は言った。ずっとそれが棘になって抜けなくて。


パソコンに向かいながら、頭をひと振り。今は仕事に集中しよう。無理矢理にでも。