勢いよく出ていった専務が戻ってきたのは、それから1時間経ってからだった。

無言で戻ってきた専務は、何かを考えているようだった。
怒ってるようにも思えたが、パーティの事で確認したい事があった私は専務の部屋をノックした。

コンコン

「はい」

「専務、よろしいですか?」

「あぁ、なんだ?」

「明日なんですけど、さっき聞き忘れてしまって…」

「なんだ?」

「秘書として同行するので、スーツで構いませんよね?」

「あ、あぁ…、いや、ダメだ」

「ダメだ?えぇ!そんなっ…」

無理、絶対無理!
がっつりドレスなんて無理!

「ふっ、冗談だよ。そんなあからさまに顔に出さなくてもいいだろ。普通は皆んなドレス着たがるのに」

「専務まで、からかうの止めてください。秘書として、失礼のないようにはさせてもらいますが、皆さんが着るようなドレスは、ほんと無理ですから…失礼のないように、スーツは言い過ぎましたが、きちんと考えてきますので。華美な物は苦手なんです」

「分かってるよ。済まなかった、明日は頼むよ」

「はい、では失礼します」


ふー。
部屋から出た私は、溜息をついていた。
専務まで冗談言うなんて、もう。
明日の服どうしようか。

帰りにでも買いに行こうかな…
いつものあそこなら…揃えられるかな。


そんな事を考えていると、いつの間にか終業時間になっていた。