「ま、まだ何かあるんですか?この上に…高瀬、君は」

今まで黙って聞いていた室長が、私を見た。

「…涼香、まだ何かあるのか?」

「え、いや、あの…、兄さん!」

「フフ、いい機会じゃないか?」

「仕事の話して下さいっ、あ…後で蓮さんだけに言いますっ」

私は、それだけ言うと専務室を出て行った。
言える訳ないじゃない、今のこれを言うだけでもかなりの勇気がいったのに。


「ま、如月専務。涼香もあぁ言ってるんで、後でもう一つ隠してる事を聞いてもらえますか?たいした事じゃないですよ。この事に比べるとね。じゃ、園田、提携の話を進めさせてもらおうか?書類出して」

「はい、社長」

「…は、はい。分かりました。今回の提携の件、よろしくお願いします」

私がいなくなった後、SEIWADOと如月商事の業務提携の話は滞りなく進んだ…らしい。

帰る時に、兄さんから聞いた。
そして、お前もいるはずだったのにな?と嫌味まで言われて。

兄さんは、私が父に似ていると言ったけれど、私なんかよりも兄さんの方が父に似ていると思う。根っからの策士なんだと…

兄さんと園田さんが帰った後、専務室に私は呼ばれた。

失礼します、と入った専務室には蓮さんと室長が待っていた。