天気が良く日差しがいい昼間の公園、鳥や周りの騒音がより良く聞き取れる静寂の公園。のんびりと散歩をしている老人にとっては心落ち着く場所。

そんな公園に、ベンチで一人の依奈は泣いていた。鞄を顔に押し付け、思いっ切り泣いていた。章太の顔が思い浮かぶ度、心の傷は深まり、その代わり涙と悲しさが溢れる。

逃げてしまった、立ち向かえない、そんな自分に依奈は心底絶望していた。

一人公園でしばらく泣き、依奈はとぼとぼと家へ向かって歩み始めた。

泣き疲れたのか、心が折れたのか、依奈の目には輝きはなかった。
そこでふと依奈は章太の母親のことが気になった。章太の母親は章太を自分より大切に扱っていた。


善子さん...一体どうしてるのかな?....


依奈は家への進路を変えて、章太の家へ向かった。


章太の家の玄関の入り口に立つと、インターホンを押すのに戸惑った。
何か見えない力が遮っているようにも思えた。

章ちゃんにしたこと考えればこんな事する権利なんてない...
だけど....

依奈は唾を飲み込み、震える指でインターホンを押す。
家の中で鳴った音が聞こえる。だが、いつまで経っても足音が近付く音はしないし、そもそも人の気配すら感じられなかった。