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それからパトカーに乗った警察官がふたり到着し、あなたと梶村さんは路上でそれぞれに事故の聞き取りを受けました。概要を話し終えると、警察官が「同乗者の方もお願いします」と言ったので、あなたは車へと戻って来たのです。

「藍川さん」

優しく声をかけただけでは彼女は起きませんでした。あなたは彼女にこれ以上大きな声を出したくはなかったので、助手席のドアを開け、そこへ軽く屈みます。
眠ったままの彼女の肩と二の腕の間あたりに手を添えて、そこを揺らしてみました。

「藍川さん」

「ん……」

「すみません、起きられますか」

彼女は目をこすりながら首だけごろんと動かしましたが、まだ眠ったままでした。なかなか起きない彼女に背後の警察官はため息をつき、腕を組んで急かしてきます。しかしあなたは気にせず、彼女のペースに合わせていました。
もう一度、肩を揺らします。

「……藍川さん」

あなたは本当に起こす気があるのでしょうか。囁くほどの声で呼ぶばかりなのです。もちろんこれでは神経の少ない彼女は起きません。
呼び掛けても起きないと分かると、あなたはブランケットにくるまったままの彼女の肩とシートの間に右腕を差し込んでいき、ゆっくりと抱き起こしました。潔癖のあなたが自らそのような行動をとったのは、少々驚きです。
あなたの腕に支えられながら、彼女は小さくうめきます。

「ん……碓氷、さん……?」

「起きましたか」

「………え、え!あっ……すみません……」

「いえ。警察の方が藍川さんにも話を聞きたいそうなので、少し大丈夫ですか」

「あ、はい、もちろん、全然……」