やけにぱっちりと目が覚めた。
ああ、また今日が来てしまった。


今日は、

いいや、

今日も学校に行きたくない。


7:20

今起きないと、ちゃんとした生徒として登校できなくなることは分かっている。
でも、だけど、体じゃなくて心が起き上がらない。


家の外では小鳥のさえずりが、
爽やかな1日のスタートを演出している。
そんなはずなのに、この部屋の中においてはその爽やかさでさえも、離陸しそうな元気な心を墜落させる原因でしかなかった。

熱があるわけでも、失恋したわけでも、
誰かに虐められているわけでもない。
今日の課題は昨日寝る前に済ませた。
誰かが納得するような理由なんてない。だから余計に、今起き上がらない理由がわからない。
ただ、幸せな甘ったるい夢から引き戻された自らの現実に絶望した。

「おれはどうしたのだろう?」

笑顔のクラスメイト、部活の仲間、先輩。親。
みんないい人で、正しくて。
行かない理由なんてない。
そのはずなのに。

いっそのこと、寝過ごしていたらどれだけ楽だろうか。または、グレゴール・ザムザの様に毒虫にでもなっていれば。。

けれど、目はぱっちりと開くし、首を傾けると見慣れた四肢はいつもの身体にくっついている。

それでも心は起き上がらなくて。


正しい世界の中で、1人だけ
理由のない不正を働こうとする。
この考えが白日の下に晒されると誰もがこれを
ズル休みと呼ぶだろう。

皆がしていないズルをしている。
それだけで真っ当な人生という名の階段を踏み外してしまう。とガチガチの頭はそう考える。

でもさ、同じ生き方してる人ばかりも面白くないよね。社会を斜めに見る自分が突然登場して、
自分に向かって粋がってくる。

昨日の夜消した照明を朝日が窓から照らした。
つよい光の後ろ側には濃い陰がくっついている。
いい事と悪い事。
問題と答え。
一つ一つ教えられて、その通りに覚えてきたけど、
全てに対して「なぜ」とは一度も考えたことがない。先生に聞くと面倒な奴だなって顔をしたし、友達からだって厄介な奴だってあしらわれた。

そして今、起き上がらない心に対して「なぜ」と聞いても、短くて分かりやすくて、真っ当な答えは見つからない。


ただそこには穴がぽっかり空いているだけだ。


真っ当な答え。みんなが求める真っ当さ。
答えにそれを求めるから「なぜ」って思うのが面倒になる。真っ当さに守られたいけれど、真っ当さの後ろに隠れたくはない。

昨日は行ったんだ、今日くらい良いだろう。
まだ、真っ当な人間に戻れるはずだ。


懐いた疑問とその答えはいつしか穴となって
もう一度俺の前に現れる。

立ち上がった俺は光に向かって歩き出した…