「おはよ。」

背中越しに聞こえる掠れた声で目が覚めた。
カーテンの向こう側はあったかい光を集めている。

「んー、おはよ」

隣で寝転ぶあなたの方に寝返りで向きを変えて、まどろみの中、右隣にいるあなたを見つめる。

あ、好きな顔だ。

真っ白な頭にそれだけが浮かぶ。
蜂蜜のようにとろけそうな甘いあなたの視線。
無意識にあなたの頬を両手で包んで、その唇に触れるだけのキスをした。

驚きと嬉しさを同時に表現するような笑顔につられて、私はもっと幸せになる。
足を私の右足に絡めてきて、私もやり返す。

あなたは瞬く間に体勢を変えて私の両腕をベットの上にしっかりと捉えると、私に深い深い貪るような朝の挨拶を始めた。

まばゆい光が飛び散る刹那に与えられる音のない幸せと高揚感の後、私は閉まっていたカーテンを開けた。部屋が格段と明るくなる。
さあ今日はどこ行こう。

キッチンに向かったあなたに話しかける。
「ねぇ、今日すごく晴れてるよ」

キッチンからはトースターの時を刻む音と、
コーヒーメーカーの喉を鳴らすような鳴き声がする。

「晴れてるな」

短い答えに少しだけ心が曇る。
さっき見た夢が頭によぎった。
いつか、あなたも去ってしまうのかな。

ソファーに座ろうと窓に背を向けると、
机の上に私が期待してた返事が置いてあった。

トースターの合図が鳴り響いて、
心に小さく現れたシミも消え去った。
ふわっとしたコーヒーの香りと一緒にあなたがお皿にトーストを乗せてキッチンから出てくる。

「で、行きたいとこ決まった?」

私はスキップでキッチンに行って、
色違いのカップに一つずつコーヒーを注いだ。
ミルクも大目にいれるから、
カップギリギリになっちゃう。

「今からなら、どこだって行けるよ」

コーヒーをこぼさないように、でも急いで机に運んでカップをコトンと置いた。
その勢いのまま、あなたの隣に座る。

トースト片手に相談する今日の計画。

眩しい朝はやっぱり、ホットコーヒーで。
あなたと一緒に。