ケータイ小説 野いちご

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春にはなれない僕たちは、星を解かして影をつくる

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「あんたもそろそろそんな不毛な恋なんかやめなよ」


決して自分に言われたわけではないのに肩が強ばったのが分かって、感じた動揺をすぐに隠した。


「そんなの私が一番分かってる」

「本当にダメな男にばっかり引っ掛かるよね、あんたって」


ぶすくれてテーブルに伏せる友人、それをビール片手に宥める友人、そしてそれを傍観する私。
召集がかかったのは今日の講義が全部終わってから。
話を聞いてほしいと言う友人に連れられて居酒屋に入り一時間近くが経過していた。
相談事のあるといった目の前の彼女は、キンキンに冷えたビールとウーロン茶で乾杯する前に重々しくその口を開いた。

大方予想はついていたものの、「浮気された」と聞いて「またか」と思ったのは私の隣の彼女も同じのようで、小さな宴会は重苦しい雰囲気のまま幕を開けた。

彼女は大体にして男運と言うのに恵まれていなかった。

大学に入学してからこの約二年半の間に、私の知る限りでは片手で数えられる以上の男と付き合ってきたはずだが、どれも長続きした試しがない。
おまけに破局の原因は決まって相手方の浮気だ。

多少の原因がわかっていれば彼女も改善の余地があるものの、それがただ相手の方が彼女に「飽きた」から浮気されるのだそうだ。
理由としては至極真っ当かと思われるが腑に落ちないことには変わりなく、その飽きる原因を聞いてもただ単に飽きた、それだけらしい。

だからこんな風に呼び出されて一緒に晩酌に付き合うのもこれが初めてではない。

友人の欲目かもしれないが、彼女は愛嬌があって料理も上手、性格も申し分ないのにどうしてそんなにも簡単に「飽きた」などとのたまえるのかは不思議でしょうがない。
私が男だったらきっと手放さないだろうにと思うのだが、女と男とでは嗜好が違うのだろう。
そう言って慰めることしか私たちにはできないのだ。


「次は絶対いい恋愛できるって」

「……もう私、しばらくはいい。冷却期間にする」

「そう言ってまたけろっと彼氏つくるくせに」

「……」

「そこ、黙らない」

「私の恋愛体質どうにかならないかな」

「あんたは悪くないよ。向こうがどうかしてるんだよ。浮気するなんて」

「そう、結局手放して後悔すんのは男の方だよ。バカだよね目先の快楽だけなんて。あー、ヤダヤダ」

「……私、二人の彼女になる」

「ん? なる? あ、でも朱里はすでに人のものだからダメだよ」


思わず飲んでいた水に噎せた。
ゴホゴホと肺に入っていきそうな水を吐き出す勢いで身体を揺らして咳をすると、二人が背中をさすってくれた。


「ごめん、ツボに入った?」

「いきなり変なこと言わないでよ」

「でも本当のことでしょ」


ニンマリの気持ちの悪い微笑みを向けてくる二人に、私は沈黙を返す。
だって、表向きはそうかもしれない。
あの冬から約二年が経った今まで私たちの関係は「恋人同士」として世間的には通してきたけれど、私たちの間に恋情が孕んだことは一度もなかった。
ただの、一度も。

だから私は、玲のものではない。

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