ケータイ小説 野いちご

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春にはなれない僕たちは、星を解かして影をつくる


人を呪わば穴二つ。
この諺は正しい、とひとり海風にあたりながら、寄せては返す波を見て思った。

夜の海は真っ黒に染まり、天上の星屑も全部集めたように月明かりで輝いている。

今日はせっかくのサークルの新歓で、海に行ってバーベキューを楽しむ一泊二日の旅だったにもかかわらず微塵も、楽しむことができなかった。
リゾート地のように綺麗な海ではないけれど、それなりに広く雄大で、涼むにはもってこいの海原を目にしても感動も起きなければ、バーベキューで出てきたお肉の数々の味もちっとも分からなかったし、もしかしたら今夜起こるかもしれないドキドキハプニングを期待することも億劫だ。
今頃はみんなで締めに花火を楽しんでいるはずだったのに、生暖かいため息さえも波に飲まれてしまう。


正直朝から体調は優れなかった。
月のものも三日ほど前に終わったはずなのに、朝起きて感じた倦怠感。体温計で熱を測ってみれば微熱。きっと出かけてみれば興奮だとか気合いだとかなんだとかで気にならなくなって、一泊二日くらいは乗り切れるはず。
そんな軽い気持ちで集合場所に向かったのに、借りてきたマイクロバスに乗り込もうとしてその姿を見つけた時には、私の前にいた友人の首を思わず締めそうになった。
正確には、締めた。

だって聞いてなかった。
まさか萩谷玲(ハギヤレイ)も一緒に合宿に来るだなんて。


「なんで教えてくれなかったの?」


まるで何事もなかったようにマイクロバスに乗り込もうとする友人たちの首根っこを捕まえて、小声で、けれど叫ぶように耳打ちした。
問い詰めると友人たちはシュンと眉を下げて、言った。


「だって、言ったら朱里(シュリ)、『行かない!』って言い出すんじゃないかと思って」

「それだけは私たちも嫌だったから、隠してたの」


ごめん! と顔の前で手を合わせる友人たちを前に、私は二の句が継げなかった。
そんなことはない、と言いたかったけれど、たぶん前もって知らされていたら参加しなかっただろう。

なぜなら私は萩谷玲が心底苦手だからだ。

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