ケータイ小説 野いちご

ルリタテハの瓶

一章 逃奔

抉られるようなあたまの痛さに、ぼくはゆっくりと目を覚ます。

痛みを緩和するように、うでにつめを突き立て、かきむしった。

ぐじゃ、ぐじゃ と表皮がはがれ、
真皮がぼくを出迎える。

靉靆たる空間に傍観者の讒謗がひびく。

虚妄を真とされ、あの男をおもいだした。

「ころす」

「ころす」

「ころす」

ぼくは、くりかえす。

拘束具をひきちぎり、駆けだす。

(だれかが、くる)

(あいつが、くる)

「にげる、にげる」

「上のほうに、にげる」

蕩けたのうみそで、ベタベタ の澆薄な顔のコンクリートを走る。

ぐぽぐぽ と憂節を感じとる首が鳴った。

傍観者たちはこう言うのだ。

「母親」

「父親」

「女」

「男」

(だまれ)

(だまれ!)

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