忙しい時は疲労感とストレスが溜まっていくものの、そんな時ほど時間が経つのが早く、気がつけば仕事が捗っていることも少なくはない。
今週は本当に忙しくて残業ばかりだったけれど、それも昨日で落ち着いたから今日は定時で帰れるだろう。


午後は比較的のんびりしていたから、コーヒーでも淹れようと給湯室に行くと、程なくして足音が近づいてきた。


「あ、莉緒ちゃん」

「二宮くん、戻ったんだ。おかえり」

「ただいま。コーヒー淹れるの?」

「二宮くんも飲む?」

「じゃあ、お願いしようかな」


ニコニコと笑う二宮くんは、そのまま壁にもたれて腕組みをした。
てっきりすぐに立ち去るのかと思っていたけれど、コーヒーが入るまで待つつもりなのだろうか。


「あの……コーヒーなら、あとで持って行くよ?」


じっと見られているのはなんだか少しだけ居心地が悪いような感じがして、苦笑になりそうな笑みで言ってみる。
すると、すぐに人懐っこい笑顔が返ってきた。