翌朝、だるい体を持て余しながらベッドから下り、ひとまず身支度を整えることにした。


あまり眠れなかったせいでまだ目が冴えなくて、冷たい水で顔を洗ってみたけれど、頭も体もシャキッとしない。
念入りにスキンケアをしてからメイクを始めたとき、ようやく穂積課長に言われたままに素直に準備をしている自分自身に気づいて手が止まった。


どうしてなのかな? 別に、課長に言われた通りにしなくてもいいはずなのに……。


心の中で紡いだ疑問の答えは、わからない。

だけど……課長が迎えにきてくれる時間が迫っていることはちゃんとわかっているせいか、すぐにまた手を動かしている私がいて、これではまるで自分の意思がないんじゃないかとすら考えてしまう。


それなのに、やっぱり私の手が止まることはなかった。


結局、随分と余裕を持って支度ができた私は、お気に入りの馬蹄型のネックレスを意味もなく何度も触りながら、数十秒ごとに窓の外とスマホを確認していた。