「広いのね、王宮って」

 馬車に揺られながら、アディはため息をつく。

「そうですね。門に入ったのはかなり前ですけどまだ着きませんものね」

「まさか、王宮の中に森があるなんて思いもしなかったわ」

 馬車は、先ほどから木々の生い茂った森の中を走っていた。森と言っても、等間隔で植えられている木々はすべて、見栄えを計算されて植えられたものだ。

「あ、お嬢様、あっちには大きな池がありますよ! あれも王宮の一部なんでしょうか」

 はしゃぐスーキーの声を聞きながら、んー、とアディは思い切り体をのばす。馬車が珍しかったのは、最初の一日だけだ。あとはろくに動けもしない狭い空間に、とっくにアディは飽きていた。