次の日から、本格的な王太子妃教育が始まった。

 講義の内容は、キリリシア王国の歴史に始まり、地理や語学など、様々な分野に及んでいた。特に、歴代の王族とその分家などの貴族についてのくだりは、あまり社交的でなかったアディにとっては初めて聞くような内容ばかりだった。

 他にもマナーやダンスなどの実践の時間もあり、アディたちの毎日はめまぐるしく過ぎていった。

「ふざけないでください。アデライード様」

 今日は、過去の王朝に関しての試験であった。アディの答案を持ったルースが、わざとらしくため息をつく。

 扇を持つアディの手がぎりぎりと震えた。

 ふざけてません!

 そう口に出せたらどれほど気持ちのいい事か。だがアディはあくまで深窓のご令嬢だ。何を言われても今はおとなしく猫を被らねばならない。