キリリシア王国の王宮では、今夜も華やかなパーティーが開かれていた。

 灯された明かりが、いくつものシャンデリアを通して輝いている。豪華なベルベットのカーテンがかけられた窓の向こうには、やはり庭に灯された明かりがちらほらと美しい。
 細かいレース織りのテーブルクロスの上を見れば、ふんだんに砂糖を使った焼き菓子や幾種類ものサンドイッチが用意され、貴族たちをもてなしていた。

 楽隊の弦の調べは、彼らの会話を邪魔しないように静かに、だが上品に流れていた。
 そこかしこで笑いさざめいている着飾った紳士や淑女は、かなりの数にのぼる。特に今夜はいつもと趣向を変えて、それぞれが仮面をつけて集う仮面舞踏会だ。目元や顔を半分隠した仮面ではその素性を隠しきれるものではないが、それでも、通常よりは開放的な気分の者も多い。

「そう言えば、王宮ではいよいよ王太子妃の選定が行われるのですって」