第1章 紫鬼



昔々、鬼ヶ島と呼ばれる島に紫鬼(シキ)という1匹の鬼が住んでいました。


赤鬼のような残酷さも、

青鬼のような冷酷さも持ち合わせていない紫鬼は、


鬼族の中でも″弱虫、鬼族の恥″と酷く罵倒され、

鬼ヶ島の隅で大人しく生活する日々を送っていました。




鬼ヶ島に住む鬼族は、
お頭の豪鬼(ゴウキ)様を筆頭に、

海へと繰り出しては人間の漁船を襲ったり、

村へと上陸して人間達の家を荒らす傍若無人な振る舞いを繰り返していました。



紫鬼はその光景をいつも1人、哀しい目をしながら見ていたのでした。