「和君、見てみて。
雲が下にある!!」

何が感激なのか………窓の下に広がる真っ白い雲をずっと写している。

ホンの少し前は、飛び立つ飛行機に体を強ばらせていたのに………。

去年は同じ状況に涙目になっていたが

担任として、一人だけをひいきすることは出来ず

震える千尋を遠くから見守るしかなかった。

上書きするのは俺の方かもしれないなぁ。

彼氏として千尋の笑顔を沢山引き出したい。



パシャ。

目を開けると………クリスマスに贈ったカメラを向けた千尋がいた。

ピンポン………。

シートベルト着用の合図に、飛行機の中だと思い出す。

「よく寝てたね!」

今日から5日間の休日を確保するため、昨日の夜は遅くまで仕事をしていた。

隣の部屋に泊まった千尋は、初めての二人旅行に色々話していたが……

仕事が忙しいと気づき、一人で荷物チェックをして早めに布団に入った。

「起こして良かったのに。」

「ううん、今日のために無理してたから……休まないと。
それに、今からいっぱい一緒に居られるんだもん!!」

ウキウキ弾む千尋だったが…………

着陸し始めると、一気にテンションが下がる。

手でスカートの裾を持つ千尋の指をほどき、手を繋ぐ。

「ここに居るのは、彼氏の和君。
どんなに頼って甘えてもいいんだから……一人で我慢するなよ。
俺達を教師と生徒だと思う奴は、何処にもいないんだから
堂々と甘えなさい。」

俺の言葉に目をパチクリさせた後、コテンと頭を肩に預けてきた。

わぁ!キャッ………と小さい声をあげて、握った手に力を込めるが

甘えられることは嬉しいようだ。