毎日毎日、母と母の彼氏に振るわれる暴力。
泣いたって誰も助けてくれない。

「あんたがいなければ私はもっと...」

「俺達のために働け」

繰り返される言葉にもう、私の身も心もボロボロだよ...
私が心を閉ざすのは当たり前の事だった。
閉じてしまえば大丈夫。
何をされようがな、何を言われようが。
私の中を占める感情は...

          無

今日も私はあの人達のために働く。
ずっとずっと。
でも、
私が死なないのは
私の双子の兄、咲崎遥斗が週一回ほど送ってくれるメールだった。
私はそのメールに縋って生きている。
遥斗とはもう10年以上会ってない。
両親は私達が5歳のときに離婚した。
遥斗は父に引き取られた。
私も父について行きたかった。
芸能事務所の社長をやっている父はとてもかっこよくて、優しくて、大好きだった。
でも母は、私を捨てるんだから一人くらいよこせと強引に私を引き取った。
離婚した原因は母にあるというのに。
母は私を強引に引き取ったくせに、父に押し付けられたとでも言うように

「あんたなんかいなければ...」

という。笑える。もうどうやって笑うかも忘れたけど。
聞いた話では遥斗はアイドルをやっているらしい。
人気のようだ。
でも私は見たことがない。
あの人達は、自分たちが呼んだとき以外私が自分の部屋から出ているのが気に入らないから。
でも、学校でクラスの女子たちが見ていた雑誌でチラッと見えた遥斗はキラキラしていた。
対して私は、朝から遅刻ギリギリまでバイト、学校、家事、そしてまたバイト。
眠りにつくのは日にちを超えてからが当たり前。
だから、私の目の下にはいつも隈がある。
ひどい顔をいつもしているから、私と遥斗が双子だと気づく人はいない。
かなり似てるんだけどな
でももう限界...

「遥斗...会いたいよ...」

それがおそらく、何年ぶりかに吐かれた弱音。