ケータイ小説 野いちご

この作品のキーワード

生徒会長時給850円!

文化祭準備

私がアルバイトを始めて約1ヶ月が経った。ここのところはチャリ整備や生徒会室の掃除など、軽い仕事がほとんどだった。決して慣れた訳ではないが、何とも濃い1ヶ月だったから、まああっという間だった。退屈で空白だった私の日々は、がらりと色めいた。

私はリビングでスマホを触っていた。表示されているのは、『チームチェリーボーイ』。この文字に慣れつつある自分が怖い。生徒会の噂について、近いうちに5人で集まって話し合おうという話題が出ている。チームチェリーボーイに三波君が加わってまだ数日で、5人全員で顔を合わせたことはないが、メッセージのやり取りは何度かした。5人が集まればカオスになること間違いなしだ。

ふと、送る内容も思い浮かばないのに、夜宵君とのトーク画面を開けた。彼と連絡を取り合えるなんて、夢のようなのだ。あの時まで……彼と繋がることができたのは、学校でのみだった。だから、彼が転校して、連絡先もわからなくて……ずっと探していた。

「マサ君、また会えてよかった……」

小さく息を吐きながら、私は呟いた。

「美世ちゃん! ちょっといい!?」
「うわっ!! 伯父さん!!」

急に伯父さんが部屋に入ってきた。危ない危ない、スマホを落とすところだった。……さっきの、もしかして聞かれてた……?

しかし伯父さんは、爽やかな表情のまま私の前に座った。

「ごめんごめん。美世ちゃん、最近よく学校に行ってるから、何かあるのかなーって」
「あ、ああ…………」

確かに最近ほぼ毎日登校している。その理由は、例の生徒会の噂について調べているからなのだが、伯父さんは知らないんだった。

先日チームチェリーボーイのメッセージ内で、三波君がこう発言していた。

『犯人は、先生に事件に関して告げ口をしてはならないと忠告してきました。そのため、先生方にはまだ相談しない方がよさそうです。また、このことが公になると、犯人が動きを止めてしまう恐れがあるので、詳しくは他の生徒にも話さず、チームチェリーボーイ内で留めておきましょう』

三波君と同感だ。伯父さん達にチクってバチが当たるかどうかは知らんが、気味が悪いからな。それに、更なる証拠を掴むためにも、他の人達には黙っておこうという結論に至った。どうでもいいが、三波君って直球が大事とか言っていた割に、チームチェリーボーイ公認したんだな。

「あ、いや、別に大したことはしてないんだ。ただ、趣味が合う生徒数人でよく会話するようになって……」

私はどうにかぼかした。だが、伯父さんは相変わらず優しい笑顔をしていた。

「そうなんだ! 美世ちゃんがアルバイト以外の日にも学校に行って友達もできたなら、僕は嬉しいよ!」

そうだ、私はバイトだ。最初はただ伯父さんに言われた通りに仕事をして、金をもらって、欲しいものを買う。そうしようと思っていた。だけど、仕事をしているうちに、何か充実感を得ることができ、さらには夜宵君達と出会ったことで、いつしか私は毎日が楽しいと思えるようになった。

あの頃……高校に通っていた頃は、友達なんてほとんどいなかった。何が楽しいのか、何がしたいのか……完全に見失っていた。バイトを始めた時も、まさか誰かと深く話すなんて、思いもしなかった。友達……彼らは私をどう思っているのかはわからないけど、私は…………友達に、なりたいな……。

「……ありがとう。少しの間しかここにはいられないけど、バイトも頑張るよ」

ぎこちない笑顔で私は答えた。伯父さん……仕事をしなければいけないのに、遊んでばかりですまない。

謎の多い生徒会。よくわからない状況に戸惑いながらも、もっと彼らと話せたらな……スマホを見つめながら、そう感じた。

< 25/ 107 >