ケータイ小説 野いちご

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生徒会長時給850円!

事情聴取

また新しい1週間が始まった。私は昨晩のメッセージを読み返した。

『明日の放課後、生徒会室に行くね! いい案を思いついたんだ!』

夜宵君に会える。とても心が躍る。このいい案とは、99%の確率で生徒会の噂についてだろう。

私は時計を見た。もうお決まりの行動だ。あと五分。あと5分で授業が終わるはずだ。

この5分がかなり長い。単純計算してみると、60×5=300秒だ。10秒なんてあっという間で、それを30回繰り返すだけなのに、いつになったら終わるんだと思ってしまう。時計の秒針を意識して300回も聞けと言われると、途中であれ何回チクタクなったっけ?となりそうだが、私らって無意識で膨大なチクタク音を聞いているんだよな。

そうこう考えていると、秒針の音は別の音に遮られた。

ガラガラッ!!

私はハッとしてドアを見つめた。嬉しさと驚きで鼓動が速くなった。登場したのはもちろん夜宵君だが、今日のガラガラ音はいつもよりでかい。どうしたんだ。

「……夜宵君、授業お疲れ様。何かあったのか?」

すると夜宵君は、息を切らしながらキラキラな笑顔を私に見せてくれた。

「はあっ……、エミリオさん! 僕の案、聞いてくれる?」

絶対あのことだな。彼は戸を閉めた後、早足で私の元へ来た。

「案、というのは例の件……だよな?」
「いえす!」

欧米かとツッコミを入れたくなったが、激萌えなのでとりあえずこのまま。

夜宵君はその笑顔を崩さぬまま、私に言った。

「事情聴取をしよう! 事情聴取!」
「事情聴取!?」

言いたいことは大体わかるが、一応聞いてみよう。

「事情聴取って、具体的にはどのようなことをするんだ?」
「えっとねー、旧生徒会に関する人達に、当時のことを聞くんだ。この噂について、どう思っているのか、とか」

なるほど。当事者に聞けば、何かわかるかもしれないな。……事情聴取って、何だか彼らが犯人みたいな感じだな。

私が腕組みをしていると、夜宵君はソファーにゆっくりと座った。お、おいおい! 距離が近いぞ! 別に密着している訳ではないが、手を伸ばせば届く距離とはこのことだ。……だめだ、意識してしまう……。君って足が長いねとか、その手袋を脱いでくれないかとか、変なことを言ってしまいそうだ。

「本当はね、旧生徒会長に聞くのがベストなんだ。彼女が海外留学へ行ってから、この謎が始まったから。でも、その彼女は今いないし……」
「海外留学、か……」

どうやら前の生徒会長は女子生徒だったようだ。

夜宵君はこくりと頷き、続けた。

「だから、まずはあの人に聞いてみよう!」
「あの人?」
「生徒会長がいなくなったちょっと後、生徒会を辞めた人だよ。彼なら何か知っているかも!」

そういえば前に言っていたな。その彼は、何故生徒会を辞めたんだろう? 成績……って夜宵君は言ってたけど、本当は何か別の理由があるのだろうか。

「その人のこと、夜宵君は知っているのか?」
「少しだけ知ってるよ! よく、昼休みに校庭でひなたぼっこしてるのを見かけるんだー」
「高校生がひなたぼっこって何かすごいな……」

理由はわからんが、生徒会を辞めたそのひなたぼっこ少年。彼が辞めたのは単なる偶然? それとも……。

夜宵君はバッと立ち、やる気に満ちた目を私に向けた。

「明日! 明日の昼休み、その人のところへ行こう!!」
「うをっ!?」

変な声を出してしまった。もう夜宵君は誰にも止められないだろう。……でも、君のこんな一面も好きだ。

目の前で柔らかな髪を揺らす彼を眺めて、私もぎこちない笑みを浮かべた。

「……了解した」

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