「ねえ、まだ着かないの?」

私はイライラしながら、車を運転する坂井夏樹(さかいなつき)に訊いた。

「裏道で行けばすぐ着くって言ったの、夏樹でしょ?」

「ごめん、美麗」

夏樹が謝る姿を見ているのもイライラする。

「早くなんとかしなさいよ!!」

私は怒鳴って爪を噛んだ。

「美麗〜。ほら、これでも食べて落ち着いてよ」

隣に座る木村美湖(きむらみこ)が、私にキャンディーを渡す。私はそれをゴミ箱に捨てた。

「えっ…」

呆然とする美湖を私は睨みつける。

「私、あんたみたいにデブな豚になりたくないから!!」

「ご、ごめん……」

美湖は私に怒ることなく頭を下げ、夏樹は何も言わずに運転をし続けている。

夜の山道は暗くて不気味。おまけに激しい雨が降り始めた。

「……何でこんな目にあわなきゃいけないのよ!」

私は舌打ちをしながら、窓の外を見つめた。



私、菊川美麗(きくかわみれい)は生まれた時からみんなに愛される幸せなお姫様だ。

パパは有名な会社の社長。ママも有名なモデル。美男美女の間に生まれた私は、スタイル抜群で誰もが振り向く美少女となった。