「和佳菜は?」


遠くで、誰かの声が聞こえる。


「眠ってるわ。薬も効いてきたみたいでぐっすりとね。…ったく、あの子どれくらい気を張ってたのかしら。貴方達、なにもわからなかったの?」

「それは…」

「はあ……馬鹿ねえ。和佳菜もそうだけど。あんた、仁もよ。仁、貴方、あの子を自分のものしたと思ってないよね?あの子の心を掴めないままわかった気にならないでほしいわ」

「……なってねえよ」

「なってたから、自分の部屋に入れたんでしょ?あの子の作った笑顔に簡単に騙されて。あの子の心を掴みたいなら、作った笑顔を見破りなよ。そうじゃなきゃ、ワカナはあんたから離れていくよ」

「…わかってる」

「わかってるなら、出てって。何回言ったらわかるのかしら。あの子の心安らぐために貴方は必要ないの」

「……また来る」


そう言って仁は少し開いたドアから出て行った。