龍神を呼び出し、加護を貰う儀式。


"宵龍儀”と呼ばれるそれは、様々な問題事が影響で、延期を繰り返していた。


漸く、明日に行えることとなった今、後宮は騒然としており、誰もがバタバタとしている。


特に皇后宮の人達が―……何故ならば、共に、李翠蓮の立后式が行われるからだ。


「立后式はともかく、儀式に出てみたいな」


そして、そんな前夜。


ふとそんなことを呟いた皇太后を前にして、翠蓮は首をかしげた。


「儀式って……一度、お出になられたでしょう?」


先帝の時は行われなかったそれも、


先々帝の時は行われたはず。


儀式には皇后、または、後宮内の最上位の妃が伴うことが決まり事だから、先々帝の皇后であった柳皇太后も参加しているはずだが。


すると、皇太后は少し好奇心を面に映し、


「龍神の方々は、とても麗しい見目と聞く。残念ながら、儀式は行っても姿は見えんかった」


と、残念そうに笑う。


こんな表情を見ると、やはり、先々帝とはそれなりに気の合った夫婦間であったのであろうと推測できる。


龍神、つまりは、飛燕たちのことだろう?


「確かに、私も拝見したことはありませんね」


皇太后の言葉に同意を示したのは、卜占が得意だという、先々帝の御兄弟であらせられる皇子―淑紫京様。


皇太后と仲が良いそうで、よくこうして訪ねてきているらしい。


玄和国の王であるらしい彼は理知的な笑みを浮かべながら、水晶を撫でている。


「見てみたいのですか?」


「拝見したいとは思いますね」


「そうじゃの……妾は信じている方だから」


「そうなんですね。喜びますよ、飛燕たち」


「「え?」」


顔を見合わせたふたり。


「―呼んだか?」


翠蓮が名前を呼んでしまったせいで、召喚されてしまった飛燕は何故か、子供を抱いていて。