「……死んだのは、栄家当主ですか」


書類を見ながら、翠蓮は嘆息した。


「早いな、もう情報を得たのか」


「……流雲殿下と、調べたんですよ」


「兄上と?」


龍睡宮が臥室。褥に横になり、二人で話し合う。


勿論、役目は終えたあとで。


「翠玉として、色々と調べていますが……例のあの人が、どうして、そんなことをしたのか……」


翠蓮が知っているのだ。


恐らく、いや、間違いなく、黎祥も知っていることだろう。


翠蓮の信頼していたあの人と、兄が、罪を犯すとは思わなかったけど。


書類を眺めながら、変な気持ちだ。


あの人と兄が、裁かれるかもしれないのに……翠蓮は特に悲しいとか、そういう気持ちはなかったのだ。


あるとすれば、死人に対する怒りだけ。


「…………翠蓮、お前は平気か?」


「?」


「兄が関わっていたなど、辛くはないか」


翠蓮が切り出したことで、話してもいいと思ったのだろう。


翠蓮の髪に触れ、黎祥は問いた。


「辛くない……というと、嘘になりますが……」


でも、だからといって、振り乱す程に嘆いている訳でもない。


どうしてだろう。


兄は大切で、あの人がしたことも、致し方ないことであるということを、理解しているからだろうか。