自分は生まれた時から、愛されていた子供だったのか。


物心がついて、王の兄の暴政に怯えながら生きる人々を見て、たった一人の弟に怯えている王の兄を見て、自分はそんなことを考えていた。


愛とかそんな、世迷言。


信じられるのは、自分だけ。


毎日、毎日、少量の毒を口にして思う日々。


"母”の皮を被った、女狐から出される飲み物を。


毎日、毎日、少しずつ、口にする。


おかげで、出来上がった毒に強い体は、"たまたま”口にしてしまった毒にすら、倒れなかった。


「―来たね」


自分は微笑んで、勢いよく開かれた扉を見た。


後宮書庫は長い間使われておらず、埃っぽくて。


挙句、革命の時のせいで、血とかが残ってたりするし、貴重な文献もボロボロで。


「いらっしゃい、翠蓮」


気位の高い女狐は近づかない、
自分にとって、一番良い隠れ家。


「お、豹揮と清宸も来たのか?」


翠蓮が後ろに連れている人物を見て、笑みを深める。


歓迎を見せ、手を差し出しているのに、決して、手を取ろうとしない彼女は。


「灯蘭様に、聞きました……」


苛烈な瞳を、自分に向けてきて。


「用件は?」


尋ねて、自分は肩を窄める。