「―じゃあ、身代わり宜しくね。蝶雪」


「お任せ下さい。―いってらっしゃいませ、翠蓮」


翠蓮が身につけるはずの衣装、


そして、蝶雪が身につけるための衣装。


それらを交換して、龍睡宮を飛び出した翠蓮が向かう先は勿論、内楽堂。


下町で作るに作り、貯めまくった薬一式を抱えて、懐かしの順翠玉の扮装。


「―灯蘭様!」


龍睡宮は大きな池の上の渡り橋を渡って、宮に入れる仕組みになっているため、内楽堂とかとは違った方向の、後宮の奥深いところにある。


きっと、その措置は翠蓮のためで、嵐雪さんが気をきかせてくれたんだろう。


「翠玉!」


約束していたとおり、本来の名で呼ぶことを避けてくれた面々。


因みに、約束といえど、翠玉の本名を知らない人もいる。


黎祥と翠蓮の事情も。


例えば、灯蘭様を呼んだのにも関わらず、返事してくれた高星様とか。


「帰ってきたのか!お帰り!!」


満面の笑顔で出迎えてくれるものだから、ほんわかしてしまう。


「順翠玉、ただ今、病より復帰致しました!」


嘘の報告を本当のように胸張って言うと、高星様は笑みを深めて。


「内楽堂、だいぶ、人数減ったぞ!俺達、兄弟で頑張って―……」


「―あれ?翠玉、お帰り」


材木を手に現れたのは、秋遠様。


「見てこれ、良い材木でしょ。僕の国のね、貿易商が……」


ニコニコな笑顔で、手伝いをしてくれているけど……。


「え、えーっと?」


よくよく見ると、ちらほら居る皇族。