「―どういうことよ!」


後宮、とある宮。


「陛下が、栄貴妃を寵愛しているだけでも腹が立つのに……っ!また、新しい妃ですって!?」


金切り声を聞きながら、彼女付きの宦官達は震え上がった。


「早くしないと……"あの子”が死んじゃうじゃないの!!寵愛を得るには、どうしたらいいの!?ねぇ、先輩として、教えてくれると言ったじゃないですか!!」


「そう慌てるな。ことはゆっくり進めなければ、お前も私も命はない」


「……っ!」


「いっそのこと、皇帝を殺すのも良い」


「!!でも、私は入宮できません!皇帝の供養のため、喪に服すことになりますし……"あの子”を放って、女道士になんてなりたくないわ!!」


「ならば、己の魅力を使って、皇帝を口説き落とせ。可能だろう?」


「っ、でも……」


「最悪の場合は、後宮に火を放てば良い。かつての事件のように……綿密な計画を作って」


微笑む先輩妃を見て、彼女はたじろぐ。


今思えば、とんでもない人と協力しているのではないかと思い始めて。


「今が、絶好の機会だ。そうだな……井戸に、毒でも巻けばいい。そうすれば、後宮全体が死滅するぞ」


「っ!そんなこと出来ません……っ!」


「今更、何を綺麗ぶってる。お互いの利害で一致した、仲間だろう?ほら、やれ。お前はいいよなぁ、私のように汚くなくて。既に、現帝の後宮で、私は片手では数えられない妃を殺しているんだ。今更、一人二人増えても同じ……なぁ?」


先輩妃の手が、彼女の喉に這う。