「―初めまして。義父・李義勇から、教育を任されました。李怜世(リ レイセイ)と申します」


「初めまして。李翠蓮です。よろしくお願いします」


―李家にて。


本日より、翠蓮はここで後宮に入るための準備を行う。


教育開始までに時間を要したのは、必要なものを李家が取り揃える時間だった。


見事、衣装から小道具まで揃った部屋の中は、目に当てるのも嫌なくらい、煌びやかである。


「さて、まずは翠蓮様のご希望通り、書物から入っていこうと思うのですが……一年近く、後宮で薬師を務めておられたのでしょう?」


「はい。順大学士の推薦で」


「存じ上げております。名を変えていたそうですから、今回の後宮入りに問題はありませんね。一年近く後宮にいて、人の信頼を頂いていたということは、それなりの礼儀はできているのでは?」


「あくまで、侍女としてです。妃としては、何の要領も得られていませんので、厳しい御鞭撻、お願いしとうございます」


齢二十五の、実直そうな青年。


長い黒髪はひとつにゆったりと結い、背中に流され、下がり気味の目尻が、彼の気質のやわらかい印象を与えてくれる。


睫毛は驚くほど長いし、体つきもやや細いし、女性的と言っても過言ではない。


「それにしても……政治面のことも、知りたいそうですね」


「私の目的は、皇帝に愛されることではありません。ましてや、栄華を極めようなど。李家には大変、お世話になることになるのに……申し訳ないと思っています。ですが、本来の目的を達成するために、知識は多く欲しいのです」


すると、翠蓮の顔をじっと見てくる、怜世様。