「はっ!?後宮へ、妃としてはいるだぁ!?」


報告したら、大声を出して詰め寄ってきた祥基。


「うん。一連の事件の、犯人を見つけるためにね」


「……はぁ」


一通りの話をした後、再び、留守になる家と革命後の下町の変わりぶりについていけないらしい慧秀兄様のことを任せるために、祥基と話していると、大声を出される。


「お前、阿呆だろ」


呆れた目を向けられて、微笑する。


「何言ってもらっても、構わないよ。もう、決めたの」


「……黎祥と、後宮で会ったんだろ?」


「…………うん。皇帝陛下と、薬師としてね」


「…………本当、馬鹿だよ。お前は」


祥基の家の中。


二人っきりで話す事情はあまりに重く、


「……辛かったな」


優しい祥基の声が、翠蓮の心を包む。


「泣いてもいいぞ」


「泣かないよ。泣いて、やっていけないもの」


「……あのな」


また、大きな溜息をつきながら、祥基は頭を掻く。


「……お前は、忘れすぎだ」


抱き寄せられて、泣かないように、と、翠蓮は唇を噛み締めた。


抱きつくのも、何もかも。


翠蓮と祥基の間では、なんの意味もなさない。


生きていくために互いが必要な時期は、確かにあったのだ。