その日は、普通の日だった。


何気ない、後宮の日常にはよくある光景。


「……騒がしい、ですね?」


日課になりつつある、栄貴妃の用意してくれた部屋で玉林さん達を見ていると、外が騒がしいことに気づいて。


「どうなさったのですか?」


翠蓮が外に出て、近くにいた人に声をかける。


すると、


「表貴人が儚くなられたのよ。原因はまだわかっていらっしゃらないのだけど、栄貴妃様が宮正司に疑われているの!」


と、教えてくれた。


宮正司というのは、犯罪を取り締まる……まぁ、簡単に言うのなら、取調べを行い、犯人を探し出し、その後の処遇などを皇帝陛下と話し合う人々が集まる機関。


基本的、女官で構成されており、そこの長を宮正と呼ぶ。


「どうして、栄貴妃様が?貴人のお方となんて、全くなんの関わりもないように思われますが」


「そうなんだけど……ほら、玉林達が……」


「え?」


「表貴人、玉林達と同じような感じだったんだって」


「同じ、とは?」


二人は解毒に苦しんでいるだけで、死んではいない。


身体にも傷が残らないよう、気をつかっているが……傷自体表れていないので、今のところ、ひとつの毒は否定されている。