姿見の前で、一回り。

「白いワンピースは、さすがに汚れるかなぁ」

ふわふわのボブを揺らしながら、独り言。そんな純粋そうな女の子は、ラージュだ。

-ピルル

無機質な電子音が知らせるのは、一通の電話。


「もしもーし」

『ラージュ?私よ』

電話の向こうで聞こえたのは、聡明な女性の声。

「ああ、リエル?どうしたの?」

リエル・アライザー。”ナイフの女帝”のあだ名を持つ彼女は、短刀の使い手だ。この業界については、ラージュの次に有名である。今回の仕事で、彼女と手を組んでいた理由を挙げるとすれば______

『花柄とか無地とか色々種類あって迷うのよ。あなた決めてくれない?』


...まあ、順を追って説明しよう。


今回の標的は、パリの豪遊男。依頼主からは、”そいつに本気の恋をさせて、残酷に殺して”とのことだった。こう言ったのが女であったため、豪遊に巻き込まれた者だと思い、女々しい理由だということで一度断った。しかし、立ち去ろうという時の”報酬は弾むのに”の言葉で”必ず殺します”と即答してしまった。故に、手順として第一任務の『男を落とす』を追行した。

まあ、ここは自他ともに認める美少女である彼女にとっては、簡単なものだったのだけれど。

ああいった男の女性のタイプは、聡明でかっこいい大人女子というあたりだった。そこでラージュは、彼女を思い付いたのだ。標的のタイプが、リエルに当てに当てはまっているので、ラージュは彼女に話を持ちかけた。