「...、エイミーちゃん、ねえ」

真夜中。豪邸に女がポツン。

「......、あ、みっけ」

女が見つけたものはというと、

「やっぱね。偉い人が横領なんてしてると、こんな書類がバンバン出てくんだよ」

この発言で分かっただろうが、勿論のこと、女はこの豪邸の者ではない。

「しかも、それを娘の部屋に隠すとはねえ」

ぼやけば、エイミーちゃんが反応する。

「ん......」

長居は不要と確信し、退室した。

--廊下がくそ長い。

まあ、無事、出られたのだが。
と、そこで__

「そこの女、何をしている?」

道中、真夜中巡回中の熱心な強面お巡りさんに遭遇。怪しまれているのだろうが、無理もない。全身黒のフード女が夜道を歩いていれば、誰だって警戒するだろう。そこで女は、お巡りさんに違和感を感じた。だが、わずか数秒__。女は、その違和感の正体に気が付く。

「...、ねえ、お巡りさん」

女は甘ったるい声で、お巡りさんと名を呼ぶ。それに何を感じたか、など知るはずもないが、お巡りさんの強面が、少々綻びる。

「な、何だ」

「道に迷っちゃったの、JHホテルってとこに行きたいんだけど...」

そのホテルの名に、お巡りさんは頬を赤らめる。それもそのはず。何せ、JHホテルとは、ここらでも有名な(ピー)ホテルだからだ。加えて、その名を口にした女の声は、甘く、低かったからである。密かに女は、(ピー)ホテルの名を耳にしただけで頬を赤らめるというのは、経験がないからかと勝手に納得し、嘲笑する。

「さ...、最近の奴は......、全くもって、そういうことにしか、興味がねえのか」