「立ち飲み屋はとんでもないドラマが行き交う人間交差点じゃないか」
と、心の中でつぶやく恵さん。

「そしてどんな人間だろうが、いい酒飲みという一言で受け入れてしまう。そしてどんな常連だろうと必要以上にパーソナルスペースに立ち入らない。

その距離感が絶妙だ。どんだけふところが深い小宇宙なんだ」

店員と話していた男性が、飲み終えて店を出ていく。飲み終わったら、みんな長居はせず、サッと帰る。

店員に話しかけられた恵さん。
「酒の前では、みんな平等、ってことだよね」
ここでは、どんな人でもみんな、ただ酒を楽しむ、酒飲みの一人だと。