「真帆、どうしたの?テンション低いじゃん」
持ってきたファッション雑誌をパラパラとめくりながら、結衣が呑気に聞いてきた。
「お腹、空かない」
目の前のお弁当を一口も食べられない。
海斗が帰ってくるからって、お母さんが張り切って大好物をたくさん入れてくれたのに。
どれも全く美味しそうに見えない。
「今日海斗君と会うんでしょ?髪でも巻きなよ、デートでしょ」
「だって、……」
「昨日のことなら話せばいいじゃん。真帆は悪くないんだし」
うん、あたしは悪くないよ。
あたしは悪くない。
でも、櫻井君に返事をしなきゃいけなかったのにできなかったのは、あたしのダメなとこだ。
どれだけ遠くに行っても信じられるのは、海斗だけ。
だから、付き合えないって言わなきゃだったのに。